衝撃的な記者会見だった。

「もう2度と喋れないと諦めもしました。
幸運にも今こうして、自分の声と言葉で、謝罪させていただけることに感謝します。
関係方々、また読者の皆様、本をご購入いただいた方々に心から、謝罪させていただきます」

結城さんは深々と頭を下げた。


「出版社の社員でありながら、ゴースト疑惑などという騒ぎを起こしたこと、申し訳ありませんでした。
今後も、ペンネーム万萬詩悠として正体素性を偽ることなく作品を書かせていただきます」

ゆっくりと一礼し、顔を上げると、爽やかに笑った。

あれから約2年半。
「空と君との間には」が遂に出版。

ニヤケてしまう。


女流ベストセラー作家「沢山江梨子」は、万萬詩悠が連載を始めた頃、原稿が〆切ギリギリだったり、遅れ気味で、編集部泣かせだったらしい。