「それは判ります。最近の結城さんは顔色がいいですから」

信号が変わり、結城は再び車を走らせながら出ない声で「素っ気ない奴だな」と呟く。

「XECEONの彼ら、まだあのヴァイオリニストを1員だと思っているんですね。あの演奏曲、彼がアレンジしてたんですね。結城さんは周桜詩月に会ったこと、あるんですか?」

和泉は次の信号待ちがどこになるかもわからないのに、一気に話し出した。

数十分、車を走らせ漸く予約した店の駐車場に車を止めると、結城は画用紙を取り出し和泉の話した内容に全て答えたメモを素早く書き付け、和泉に手渡した。

「結城さんってマメですよね。独り言みたいなわたしの話、全部網羅して」

──必要に迫られて筆談するうち、人の話は真剣に聞くし細かいことにも答える癖がついている。喋れない分、不利だからな