結城さんが酸素ボンベの入ったキャリーバックを引いて、食堂を出て行く。

その後ろ姿を見送って、机の上の田中さん達の食器も一緒に、返却口に返し職場に戻った。

机の上に積まれた書類に目を通し、急ぎの物から順に片付けていく。

結城さんには助けてもらってばかりだと思う。

今日は何とか自力で仕事を片付けたいと気合いを入れる。

コンサートに誘われたことは社内の誰にも話していない。

わたしなんかが結城さんと釣り合うとは思えない。

コンサートへの誘いは結城さんの気まぐれか、仕事の捌けない女子社員への励ましなんだろうなと思う。

だけど、わたしだって結城さんと釣り合うくらい仕事ができるようになりたい。

結城さんの力になりたい。

結城さんの無理に笑った顔ではなく、本当の笑顔がみたい。

わたしは懸命にパソコンと格闘した。