頭の上に手を置いたまま、笑みを浮かべている。

「どうしてそんなに冷静でいられるんですか?」

わたしは結城さんの笑顔があまりにも綺麗で思わず訊ねた。

──和泉、君が熱くなっても……無茶をするよな。俺は何を言われていたってどうだっていい。だけど、作家の先生方があんな風に思われているのは悲しいな

サッと画用紙を開いて書いた文字は乱れていないのに、どこか寂しげで、結城さんの顔まで悲しそうに見えた。

──西村先生がいらっしゃらなくて良かった。和泉、あとでな

画用紙の文字を読み、ハッとする。

コンサートの日で、食堂で時間を食っている場合ではなかったと、結城さんの顔を観る。

『片付かないようならメールしろ。余力はある』

結城さんはゆっくりと解りやすいように、手を動かした。

わたしは何とか手話を読み取り、頷いた。