西村は巨体を肘掛け椅子に沈ませ、どっしりと座り、結城の文字を読み取る。

「君には刺激が強すぎたかね」

ニンマリと薄笑いを浮かべ、煙草に火を点け、ゆっくりと吸った。

――刺激が……そういう単純な問題ではなく、この描写では、先の展開での犯行場面も犯行現場の描写も、これより地味では霞んでしまう。先生の作風自体が変わってしまうんです。銀田末シリーズそのものを壊してしまうおつもりですか?

「ほぉ、君は先の展開も予測し、シリーズ全体の流れまで考えたか――。ん……少し時間をくれないか。色々、整理して検討したい」

西村は灰皿の上の煙草の煙を険しい表情で眺めながら、パソコンで打ち出された原稿を手に取った。

――明後日、連絡をして伺います

「いや、儂の方から連絡して伺おう。明後日は近くに用もある」

──承知しました。お待ちしております