「作家の先生方も由樹の体を心配して、気遣ってくださっているようだ。西村先生は手話教室に通い始めたそうだし、梅川先生はパソコン教室に通っているそうだ」

「由樹は大事にされていますね。社内でも余所の出版社でも、由樹は担当を下ろされるだろうなんて噂もされているみたいですけど」

「バカな、有り得ん話だ。例え由樹が下ろしてくれと言っても、先生方が由樹を手放さんよ。芽以沙、由樹を頼む」

「ええ、できる限り」

黒田は涙声で頷いた。

西村は西村宅に着いた結城を快く迎え「1日に2度も結城くんが訪ねてきてくれて嬉しいよ」と、三段腹を揺らして言った。

結城は挨拶もそこそこ、西村に詰め寄った。

――先生の今回の作品は少々、乱暴すぎませんか? キリシタン弾圧による拷問は確かに事実で、実際に行われた暴行は、描写の比ではないかもしれませんが、この描写はあまりにも辛辣すぎると思います