不味いと思い、急いでフロアーの突き当たりを左に折れ、トイレに駆け込む。

息が激しく乱れるが気にしてなどいられなかった。

洗面台前にたどり着くと、息をつく間もなかった。

我慢していた物を思い切りぶちまけ、しゃがみこみ乱れた呼吸を整える。

情けない、いつもより刺激が強いだけじゃないかと思う。

結城は手を洗い、うがいをし、口元を洗い、編集部へ戻る。

黒田は腕組をし、パソコン画面を睨んでいる。

『黒田さん、すみません。どうです? いつもに比べて描写が』

黒田は結城の手話を真剣に見つめ、考え込む。

「そうね。今までの作品に比べてグロテスクね」

『正直、西村先生にはここまで残虐な描写は勘弁してほしい。でも、先生が心境の変化や新たな表現を模索され、読者層を拡げようとなさっているなら、担当として俺は、応援すべきなのかと』