辛辣で残虐な描写に胃液が喉元にまで上がり、何度も吐き気がする。

西村宅でパソコン画面に向かう時は、西村の話す速度に合わせ神経を集中させている。

打ち込んだ文章を持ち帰り改めて読み返すと、打ち込む時には気づかなかったことが見えてくる。


――これが活字に載る……

胸の鼓動が速くなり、結城は胸を押さえる。


「由樹!? どうかしたの」

黒田が結城の様子に気づき、駆け寄る。


『すみません。西村先生の原稿チェックをしてるんですが……描写が残虐で、これって――大丈夫でしょうか」

結城は手話で黒田に事情を話す。

黒田は「どれどれ」とパソコン画面を覗き、文章を読み始める。


『黒田さん、少し気分転換してきます。気分が……直ぐに戻ります』

黒田に断り、結城は席を立ち室を出る。

廊下へ出ると、喉元でつかえていた胃液が口の中に広がる。