愁いを帯びた顔をじっと見つめる。


――この顔も素敵…… ……


まじまじと見つめる。
だけど……鼻の穴に差した管が気になる。


彼は手を離し、ソファーに座り直す。

メモ帳とボールペンを手にとり、さらさらと文字を書き私に向け、苦笑する。


――管が気になる? 酸素吸入してるんだ。見せられる姿ではないな

私の疑問を察したようなメモ。

シュンとして踞る仔猫のようで、ふわふわして柔らかそうなアッシュブラウンの髪を撫でたくなる。


「和泉さんって言ったかしら? 貴女、部に戻らなくて大丈夫なの? 総務部は小うるさい方が多いのではなくって!?」

至福のひと時に、サッカーボールをぶつけられ、一蹴されたような気分。

キャーっと言い掛け、口を押さえる。


「失礼しました」

立ち上がって礼をし、室を出る。