詩乃は毎日、仕事帰りに病室に顔を出す。

パソコンを覗き「大人しくしていられないの」とぼやく。


『何かしていないと気が滅入る』


「紗世さんが亡くなって、あなたおかしいわよ。無理ばかりしている」


『無理なんかしてない』


「検査の数値、悪くなってるって先生から聞いているのよ」


『ちゃんと薬だって飲んでるし、用心もしてる。ダメだらけを強いられ我慢もしてる。リハビリも……それでも、発作を抑えられない』


「酸素吸入をちゃんとしないから」


『何も知らないくせに……紗世が亡くなった時、俺の心臓も止まればよかった」

詩乃がわなわなと、唇を震わせ険しい顔になる。


「情けないことを言わないで。紗世さんの言葉、忘れたの?」


『重いんだよ……枷をかけられたみたいで辛い』


「紗世さんの分も、あなたは生きて頑張るのよ」