「由樹、何考えてるの!! あなた、隠して我慢していられる状態ではないでしょう」


『……反省してるから』

相田からの連絡を受け駆けつけた姉、詩乃は病室に入るなり、結城を叱りつけた。

サイン会は騒然となり、中断も検討されたが残り時間を考慮し、最後まで行われた。

相田の機転で素早く病院に運ばれた結城は、大事を取り数日入院を命じられた。

結城は診察時、主治医に常時酸素吸入器を使用していないことがバレ、厳しい叱責を喰らった。

編集部にはミステリー作家西村嘉行、ハードボイルド作家梅川百冬、女流作家霜田奈利子等、結城が担当する作家から問合せの電話があった。

結城は誰が病室に訪ねても、ベッドの傍らに置いたメモ用紙に手を伸ばさない。

萎れたように表情が暗い。

パソコンに向かい、キーを叩き続ける。