結城の書いた紹介文を読み、沢山の作品を手に取る客も多く、改めて紹介文の大切さを実感している。


営業の仕事の地道さ、店回りの重要さを認識する。

本屋側のディスプレイへの細々した気配りにも感謝する。

売り込みだけ優先していてもダメだと、思い知らされる。


――あんな若僧に学ぶなんて

悔しさが込み上げてくる。


「水嶋さん、万萬先生の『空と君との間には』は終盤からセピア色風になるんです。喋れない主人公『吉行斎』がヴァイオリンを弾く場面は切なくて涙が止まらないんです」


「色彩を意識して緻密に描かれている作品だよな……終盤セピア色にして、余韻を出したあたりは賛否両論だけど」


「沢山先生の作品は色鮮やかな感じですけど、万萬先生の作品は淡い色彩ですよね」


「『限りなくグレーに近い空』は、辛気くさいなと思ったけどな」