黒田からはイベント中でも気分が悪くならないうちに、酸素吸入するよう言われている。

小型キャリーバックに入れた酸素ボンベは、席の横に用意している。

結城は紗世が居たら、傍らで気がけて背を擦ってくれただろうなと思う。

沢山江梨子の担当、相田も沢山の世話をしながら、結城の様子を気にしている。


「只今から『空を詠む』『空と君との間には』同時発売サイン会を開始します。整理券をお配りしますので列にお並び下さい」

店内アナウンスが流れる。

水嶋は社へ桜要請をし、社からの指示と救援を待っている。


「空を詠む」が「空と君との間には」と同時連載になって以来、隔週刊誌「野草」は、売上を回復した。

低迷気味だった頃の3倍にまで売上を伸ばし、その後も万萬詩悠の短編読み切り掲載で売上を維持している。

沢山江梨子とのコラボ企画を匂わせる宣伝も売上増に一躍かっている。