女子店員が「えっ!?」と目を丸くする。


「あの……もう色付けも終わって、挟むだけなんですか?」

『はい』

結城は答え「ありがとう」の手話をし、セッティングされた席へと歩いていく。

「スゴい!! いつもあんなに捌けてるんですか?」

「部署が違うから、よく知らないけど噂は聞く。結城の仕事は完璧で速いうえに丁寧だと」

水嶋は紹介文を見ながら「確かにな」と呟く。

沢山江梨子の数十冊もの紹介文は、シリーズ物も含め綺麗に整理し纏められている。

作品の要所をしっかり捉えながら、ネタバレもしていない。

尚かつ、数行に読み手の購読意欲をそそる文章が凝縮されている。

読みやすい文字は丸ゴシック体に統一させてある。


「噂以上だな」

「喋れないのが惜しいですよね」

女子店員はスタンドに紹介文を挟みながら、残念そうに言う。