結城さんは私の大声に、胸にギュッときつく両手を押し当てうずくまって……。

彼の様子を見守るように、側にいた銀縁眼鏡の黒田さんが、私を見上げて睨み付けながら、彼の背中を擦っている。


「すみません……」


「貴女、新入社員? 先輩から何も聞いていないのかしら? 大声は出さないようにと」


「す、すみません。聞いてきたんですけど、理由まで聞いてなくて……」

震えながら、言い訳をする。


「由樹は体が弱いのよ」

わめくように叫ぶ黒田さん。
その腕を結城さんの手が、ギュッと掴んで、口が小さく動く。


――や·め·ろ


声無き言葉が聞こえた気がして、深く頭を下げる。


「ごめんなさい」

私は何度も繰り返していた。

ふわり髪に触れる優しい感触。
静かに、頭を撫でられている。

心地好さに、胸がキュンとする。