それから

屋上で渋谷くんと色々話をした。

渋谷くんは、私を笑わそうと

楽しい話をいっぱいしてくれた。

「高校入試の時の事覚えてる?」

「えっ?」

「俺、消ゴム忘れたんだ。

マジで終わった~って思ってたら

後ろから肩叩かれて…

消ゴム半分貸してくれたのが

市ノ瀬さんだった。」

「消ゴム?……あっ!!」

「あれ、渋谷くんだったの?」

思い出した…。

前に座ってる男の子が何かを探してて

小さな声で‘’消ゴム‘’って言ってたの…

困ってたから消ゴムを半分あげたんだ。

「そう!俺ですっ…!

市ノ瀬さんが助けてくれなかったら俺

高校落ちてたかも…。」

「それにあの時、後ろに市ノ瀬さんがいて

ビックリしたんだよ。」

「何で?」

「だって、好きな子がいたから。

俺は、市ノ瀬さんの事を

知ってたんだ…。

中学の時からね。

テニスの大会で応援に来てた事

あるよね?」

「うん…。」

「市ノ瀬さん俺と会ったの覚えてる?」

「……え?」

「俺、試合の時にボールが

フェンス越えちゃって

取りに行ったらさ、市ノ瀬さんが

拾ってくれたんだよ。

その時、頑張ってくださいって

言われた。」

「そうだったんだ…。」

「あの日、市ノ瀬さんを見てから

ずっと忘れられなかった…。

だから、市ノ瀬さんと話をした時

市ノ瀬さん、やっぱりいいなって

思った。自分の気持ち言わないと

絶対後悔するから俺…

勇気出して告白したんだよ。」

渋谷くんが私を真っ直ぐ見つめてくる。