わからないけど…

今の俺の精一杯の嘘だった…。


カラオケが終わり解散した帰り道…

改札を通って駅を出ると

そこに真凛が立っていた。

真凛……?

「泰詩!!」

真凛が小走りに

俺の目の前に駆け寄ってくる。

「…えっ、お前…どうしたの?

急にカラオケボックスから

いなくなって…。」

「あ、うん…

さっきまで渋谷くんと一緒だったから…。」

さっきまで…一緒…に?

ズキン…と胸が急に痛む。

「そうなんだ…

じゃあ何で帰らないんだよ?」

胸の痛みを掻き消すかのように

俺は、少し冷たい声で言うと

その素っ気ない態度に真凛は

少し驚いた様子で俺の顔を見上げている。

「あ……うん…あの…あのさ」

そう言って真凛は、黙り込んでしまった。

「…何だよ、言えよ…。」

さっきまで渋谷と一緒にいた真凛に

イラついていたのか

少し苛立った声を出すと

真凛の肩が少しビクッとする。

「…もしかして…さっき助けてくれたの?」

「え…?さっき?」

「私が田所さんに腕を掴まれた時…

泰詩がグラスを落として…

それって"わざと"だったのかなって…。

助けてくれたのかなって…。

私…

ありがとうって…ちゃんと伝えたくて。」

真凛が俺の顔を見上げて見つめてくる。

真凛の透き通る様に白い頬が寒さで

赤く悴んでいる。

こんな寒い所でずっと待ってたのかよ…

俺に確かめたくて…。

「……勘違いすんなよ…。」