突然のことに、呆気に取られてしまった。


 けれどすぐに、正気に返る。


 それを言ったら、先輩は消えてしまう!


 美桜先輩の身体が、光を放ちはじめた。



「待てっ、行くな!!」


 
 先輩に駆けより、彼女の身体を力強く抱きしめる


 けれど、実体を失いはじめた彼女の体温は、わずかにしか感じられない。


 
「なんで、そんなこと言ったんだよ!
 消えちまうだろ!?」

「……喜んでくれないの?」

「……っ!」



 こんな時なのに、彼女はいつもと同じ笑みを浮かべる。


 涙が溢れてきて、止まらなくなってしまう。



「泣かないで、ハルくん」


 先輩は、俺の頬に白い手を当てた。


「遅かれ早かれ、こうなる運命だったの。
 だったら……想いを伝えてから、消えたい。
 ハルくんに、見守られながら……」



 そんなの、ずるい。



「……ハルくん、『先輩』じゃなくて、名前で呼んでよ」