彼女は目を見張った。


 けれども、首を傾げる。


 
「知ってたの……?」

「夕に聞いた。
 ここの七不思議になっているんだ」



 夕のノートには、このようなことが書かれていた。


 『もし、桜の妖精と出会っても、恋をしてはならない。
 桜の妖精は消えてしまうから』


 いろいろがごちゃごちゃして、敬語がぶっ飛んでしまっていた。


 桜の木の妖精は、恋をしてしまうと存在が消えてしまうんだ。


 もちろん、周りの人たちの記憶からも……。



「そうよ、桜の木の妖精は、恋をしてはならない。
 でも……」



 彼女は一度言葉を切り、息を吸う。



「ハルくんと、出会ってしまった」



 彼女の黒い瞳が、俺の瞳を見つめた。