「ハルくん……なんで私に構うの?
 私は地味だし、しゃべったりするのも全然うまくない……。
 さっきの教室で聞いたでしょう?
 私と一緒にいれば、今度はハルくんが悪く言われちゃう……。
 だから……」



 彼女の目の淵から、今にもその大きな雫は溢れてしまいそうだった。


 そんなわけ、ねぇだろ。



「先輩……」


「っ、ハル、くん……?」



 俺は無意識のうちに、彼女を後ろから抱きしめていた。


 ふわりとフローラルの香りが、鼻孔をくすぐる。


 香水とか、人工的なものじゃない自然の香り。


 なんだか、安心できるような優しいもの。