彼女は俺の手の中にシャーペンを押し込んでくれる。



「あり、がとう……」



 情けないことに、声がかすれて思うように出てこなかった。


 その彼女に──見とれてしまっていたんだ……。


 クラスの女子たちとは違う。


 その女子たちが悪いとかそんなんじゃないんだけど。


 タイプが違うというか……どこか切なかった。


 桜の花びらみたいに、はらはらと舞って消えてしまいそうで。


 今、桜は咲いていないはずなのに……彼女の背景には桜の雨が降っていた。


 幻覚か……?


 慌てて目を擦る。


 けれど、次に目を開いたときにはその桜の雨は見えなくなっていて。


 変わりに、彼女がキョトンとこちらを見つめていた。