そうこうしていると、筆箱が鞄から滑り落ちて、幸か不幸か筆箱の中身が全てぶちまけられてしまった。


 あー、もう……。



「なんなんだよ……」



 悪態をつきながら、俺はしゃがみ込んだ。


 
「あ……」

「あの……」



 シャーペンを取ろうとしたとき、誰かの手と俺の手が重なった。


 華奢な白い指。


 そして、机の向こう側に誰かがいることに気がついた。


 この綺麗な手と澄んだ声からして、女子だ。


 どっちにしろ、その声に不思議と鼓動が高鳴った。