あたしの言葉に、凪くんはなぜかそっぽを向いてしまった。
「……凪くん?」
なんで顔を手で隠してるの?
彼は、顔を背けたまま、目も合わせてくれない。
「凪くん!」
凪くんの手をムリヤリ引っ張ると……。
「え……?」
彼の顔は、赤く染まっていた。
なんで?
「……お前が無防備にスヤスヤ寝てるから……!」
「え?」
「あんまり無邪気に寝てるから、起こせなかったっていうか……。
お前の寝顔が可愛すぎて、見とれてたっつうか……」
真っ赤になって、凪くんは何かをぶつぶつとつぶやき始めた。
「起こしてよ~、寝顔見られたの恥ずかしい!」
「……俺がお前のこと生徒会室に呼んだクセに、仕事ばっかでお前のこと構わずに待たせちまってたし、熟睡してたからムリに起こしてもかわいそうかなって」
あたしたちの、秘密の約束。
放課後は、ここに来て、二人の時間を過ごすんだ。
凪くんは、生徒会長だし、たいてい残って仕事をしているから。
ほかに、空いている時間もないし。
なんだか、いつも仕事人間でクールな凪くんが、可愛い。
あたしはクスリと笑ってしまった。
「凪くん、可愛い」
「なっ!」
「“お前”じゃなくて、いつもみたいに名前で呼んでよ」