日曜日の晴れた午後。

結衣はいつもどおりの時間、いつもどおりの場所でいつもどおりに音楽を楽しんでいる。

中川 結衣 22歳

「新曲ね、とても良い曲だわ・・・」

家の隣の公園。

結衣は毎週日曜日、この公園のベンチに座りながら、ギターの弾き語りをする青年の音楽を聴くのが日課になっていた。

なんだか、泣けてくるような切ない音楽。

この人、切ない恋をしてるのかしら・・・?

音楽が止んだ。

結衣はありったけの想いを込めて拍手をした。

「ありがとう」

ふいに青年が声をかけてきた。

「いつも聴きにきてくれるね。音楽好きなの?」

「うん、私、音にはすごく敏感なの。雪の降る音だって聴こえるんだから」

「へぇ~、それはすごいね!」

「・・・昔はピアノ弾いてたの。でも2年前に事故にあって右手が自由に動かなくなっちゃって・・・」

「・・・そう、つらいこと聞いちゃってごめん」

青年はつらそうに、深い吐息をもらす。

「いいの。あなたの音楽もっと聴かせて」