クリスマス。

にぎやかにライトアップされた街並みが恋人たちの幸せそうな顔をさらに明るく輝かせる。

伊藤麻衣子 24歳。

仕事も終わり麻衣子は行くあてもないまま、街を彷徨い歩いていた。

「みんな楽しそう・・・。私も2年前のクリスマスは拓哉と楽しく歩いてたっけ」

麻衣子は首に巻いた白のマフラーを握り締め、雪の降りしきる空を見上げる。

会いたいよ、拓哉・・・。

どうして私たち、離れ離れになっちゃったんだろうね・・・。

麻衣子の瞳に、2年前の今日、笑いあいながら腕を組んで歩く自分の姿と、拓哉の姿が見える。

『ねぇ、拓哉。今年は何プレゼントしてくれるの?』

『う~ん、やっぱり今年は赤い物にしようかな』

麻衣子と拓哉。

つきあって3年目のクリスマス。

『え~!私は赤だめだって毎年言ってるでしょ。昔似合わないってからかわれてからトラウマになってるの。絶対、白じゃなきゃやだ!私は、白が一番好きなの』

『そうかな~?麻衣子は赤も似合うと思うけど。オレ、赤の似合う子好きだし』

冗談っぽく笑いながら麻衣子の瞳をのぞく拓哉。

『・・・拓哉が好きでも、やっぱり白にして・・・』

麻衣子は、拓哉の優しい瞳に思わず妥協してしまいそうになる自分を抑えながらつぶやいた。