「シエルがごめんね。 いつもこんな感じだから気にしなくていいよ。」

「…………。」


少し冷静になろうと、ルカと距離を取るためソファーに座りなおした。たいして離れたわけではないが、ベッドに居るよりは気持ちマシだった。


「じゃあ、ルカに何があったのか聞かせてくれる?」


ジョシュの問いかけに一瞬間を置いたルカだったが、直ぐに口を開いた。


「あの……信じてもらえるか分からないんですけど、鏡の中にフードを被った人が現れたんです。」

「鏡の中に?」


さっきもフードの男がどうのと言っていたな。

だがそれよりも、俺もジョシュ同様『鏡の中』という言葉に引っかかった。


「鏡の中から腕が伸びてきて……フードを被った人から『君はこちら側の住人なんだから。』って言われて、鏡の中に引きずりこまれたんです……って、こんな話信じてもらえないですよね?」

「信じるよ。」


鏡を通して空間を渡ったのか。だがそんな上級術が使えるのは並大抵のヴァンパイアではない。恐らく純血のヴァンパイアだ。『こちら側の住人』とは一体どういう意味だ?

ルカは俺と目が合うとサッと視線を逸らした。

状況が状況とはいえ、いい加減気分が悪い。