「ふふふっ…」
「ど、どうしました…?」
藍は口元を手で押さえて、笑っていた
僕は何故急に笑いだしたのか分からず不思議に思って聞いてみた
「あっ、ごめんなさいね…?
本当にあなたが昔、私が付き合っていた人とよく似ているから
つい、昔に戻ったみたいで
嬉しくて……」
藍……
「本当に懐かしい……
あの人も、あなたみたいに可愛らしい小柄な男だったわ…
30歳近くだったのに
いつも高校生とかに間違われていて…
そのたびに私が彼は30歳だと周りに言っていたわ…」
「あははは……」
た、確かに
僕はもうすぐ30歳になるけど…
高校生に間違われる
背も低いし、童顔だから
30歳だと思われない
性格も落ち着いた感じじゃないから
余計、幼く見えてしまうんだろうな……
「でも……
そんな彼がとても好きだった…
本当に愛していたわ…」
藍……
「藍……さんは、そんなに愛していた彼と、どうなったんですか…?」
藍の様子や言葉からして…
僕とは結婚していない
だけど、そんなに想っていてくれたなら…
何故結婚しなかったんだ…?
「何もなかったわ…」
「えっ…?」
何もなかった……?
結婚しなかったってことだろうか…?
「出来なかったのよ…
喧嘩して別れた後、私…よりを戻そうと
彼に会いに行ったわ…
だけど、彼は……」
「彼は……?」
藍は俯いて、静かに涙を流していた
えっ…!?
あ、藍……!?
な、なんで泣いてるの…!?
僕はどうすればいいか分からず
テーブルの上に置いてあったテイッシュをとり藍に渡そうとしたら……
「……彼は…
夜道、後ろから車に轢かれて、死んでしまったの…っ…」
「……………えっ…」
僕は藍の言葉に驚き
手を止め、藍の方を向いた
えっ……
今なんて……
し、死んだ……?
死んだって言わなかった…?