「誰、一人足んねえ」
「あ、アキト。仕事で一時間くらい遅れるって連絡あった」
「一時間って……」
「仕事ならしゃあないっしょ。無理かもっつってたのを、無理に誘ったし」
バイト先の女の子に強引に頼まれて参加した合コンで、男性側が一人少なかった。
人数合わせのために来たのに、人数が釣り合わないってどういうことでしょうか。
つまり、私が余るということだ。
「美緒ちゃん、飲んでるう? 静かだねー、美緒ちゃん。もうすぐイケメン来るから、テンション上げてよ?」
違う女の子と熱心にトークしていた隣の男の人が、思い出したように私に絡んできた。
バイト先の女の子以外全員知らない顔で、人見知りを発揮している私は、皆のように上手く会話に乗れない。聞かれたことに簡潔に答え、愛想笑いを浮かべるだけで、精一杯だ。
「わーい、遅れてくる人ってイケメンなんだ?」
合コン慣れしているっぽい女の子、結亜(ゆうあ)ちゃんが、万歳をして喜んだ。
「アキト、イケメンよな?」
「顔はいいよな」
「顔『は』って。何が悪いの?」
「愛嬌がねえよな。あれでもうちょっと可愛げがあったら、モテんのにな」
「惜しいよな、惜しメン」
「悪かったな、惜しメンで。お前ら、人がいない間にディスるとか、残念すぎるわ」
話してた二人の背後から、声がした。
皆が一斉に見上げた。紺色のスーツを着た背の高い男性に、皆が驚いたけれど。誰よりも驚いたのは、きっと私だ。
「おお、アキちゃん。待ってました!」
「ご紹介します、俺らイチオシの推しメン、相良晃人(さがらあきと)くんです! 七誠銀行のホープ!」
そう紹介されたのは――
「…………市原さん?」
彼だったからだ。市原悠雅。姉との想い出の少年の……成長した姿。
サガラアキトって、誰?