「あの……、相良さんって兄弟いますよね? そっくりの双子とか」
二次会のカラオケルームにて。自然と隣になった相良さんに、タイミングを見計らって尋ねた。
みんな酔いが回ってきて、疲れも出てきて、適当にだらけたムードだ。目を瞑って寝ている人もいれば、ひたすら歌っている人もいるし、踊っている人もいるし、一対一でいい雰囲気になっている二人もいる。
「いません」
ソファーに背もたれ、気だるそうにスマホを弄っていた相良さんは、手元を見たまま答えた。度の入っていない伊達眼鏡は外している。眼鏡をかけていない相良さんは、シャープな印象が増す。
「あ……、生き別れて、知らされてないとか……だったら、すみません」
苗字が違うということは、そういう可能性もある。
双子は昔は不吉だと言われ、片方を里子に出す風習のある地方もあったとか、聞くし。
顔を上げ、相良さんは鬱陶しそうに言った。
「正真正銘、一人っ子。先月君が会ったっていう男は、人違い。分かった?」
「でも、すっごいソックリだったんです。顔が似てるだけじゃなくて、声も。その、口元の黒子も。絶対、あなたです。なんで嘘つくんですか?」
そうだ、ゆうくんには唇の右下に黒子があった。印象的だったから覚えている。黒子の位置まで同じで、人違いだなんてありえない。
それに本当に人違いだったら、自分にそこまでソックリな男、市原悠雅にもっと興味を持つはずだ。
それ以上その話をするなと言わんばかりに、相良さんはゆうくんの話をピシャリと切り捨ててくる。身に覚えがある、自分に都合の悪い話だからじゃないの?
「市原さんに頼まれて、姉に会いに来たんですか? それならそうと、言ってくれればいいじゃないですか。市原さんは……」
やばい、怒ってるという空気は途中で察したけれど、言い出したら止まらなかった。怖い顔をした相良さんが、スマホを片手に持ったまま身を乗り出してきて、咄嗟に身をすくめて目を瞑った。
身構えた私に、しっとりと柔らかい感触が触れた。唇に――だ。
驚いて目を開けると、相良さんのどアップがあった。