ーーーーー『ぼく、大きくなったら絶対にユ
ウちゃんのこと迎えに来るから!迎えにきて
ユウちゃんをぼくのお嫁さんにするから!だから… 、だから…!』

待っていてーーー
そう続くはずだったであろう言葉は嗚咽に呑まれて、そこから先はもう言葉にならなくて、私も同じように泣いていた。その約束だけが唯一私に残されたもの… 。2人して涙を流し、私は夕陽の中消えていく車をいつまでもいつまでも見つめていたーーーーー





「……… 、ハッ………!」

私が息苦しさに目を覚ますと、もう朝だった。ふと違和感を感じ、頬に触れてみると、そこは涙で濡れていた。

「あ、そうか……。シュウちゃんの夢を見てたんだっけ……」

中学に上がってからはほとんど夢にも見なかったのに、どうしたんだろう…?

そう思いながら私は学校へ行く準備をしてから下へ降りて、ダイニングに行った。

「おはよう、お母さん」

「おはよう、柚希。ご飯出来てるから早く食べちゃいなさい」

「は〜い」

そうに言われて、私は早速テーブルについた。

すると新聞を読んでいたお父さんが

「昨日はせっかくの入学式だったのに、行けなくて悪かったね。学校はどうだった?」

「お父さんは仕事だったんだから
仕方ないって!あ、あとね、初日だったけど
もう友達ができたんだよ?すごいでしょ〜」

本当はお父さんが来れなくてちょっぴり寂しかったけど… ま、いっか!


そんな会話をしているとお母さんが

「あ、そういえば…」

何かを思い出したように話し始める。


「お向かいの家があったでしょ?あそこ、秋夜くんちが引っ越してから誰もいなかったんだけど、今度誰かが引っ越してくるらしいのよ」

「へぇ〜、そうなんだ。同い年の子がいるといいなっ」

少しワクワクしながら時計を見上げると、

「あぁーーーーっ!!」

8時を回ったところだった。

「やばいっ、遅刻する!」

私はカバンを持って、バタバタと家を出た。

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい、気を付けてね〜」

私は桜の咲く道をかけだす。

「入学早々に遅刻とかシャレになんないよぉ〜」

そう呟きながら角を曲がった瞬間、

「っ?!」

男の人にぶつかってしまった。

まずいっ……!

そう思って振り向くと、目に飛び込んできたのは真っ黒でやわらかそうな綺麗な髪。優しいけれど少し寂しげな瞳……

あれ…?この人どこかで……

そこまで考えたところで、私は自分が急がなければいけないことを思い出し、

ごめんなさいっ と素早く言うとまたすぐに走り出した。

けれど急いでいた私は、彼が私を見つめ、

「ユウ……」

と呟くのに気が付かなかった……
「ハァッ、ハァッ……」

ガラガラッ バタンッ

私は席に着くと、時計を見上げた。針は8時30分少し前を指している。

「ま、間に合ったぁ〜〜!」

すると私のすぐ前の席の子が振り返る。

「どうしたのよ柚希〜。入学早々、遅刻ぎりぎりとか。なんかあった?」

ニヤニヤしながらそう嫌味っぽく話しかけてくるのは、昨日入学式のあとすぐに仲良くなった坂本 麗奈ちゃん。見た目はちょっとハデだけどすっごく優しくて、気の合う友達!友達ができるか不安だったけど、こんないい子と仲良くなれて嬉しいなっ

「もぉ〜、いじわるな事言わないでよぉ」

少し怒ったふりをして頬を膨らませると、

「あははっ。ごめんごめんて// 柚希からかうの面白くってさぁ〜」

「もうっ!」

いっそう頬を膨らませると

「だからごめんて、柚希様〜。ほらっ、柚季の好きなお菓子あげるからっ」

そうは言うものの、まったく悪びれる様子のない麗奈ちゃんに「知〜らないっ」とわざと子どもっぽく返すと、自分でもおかしくなり、思わず吹き出してしまう。すると、麗奈ちゃんもおかしかったようで、

「ぷっ… 、あはは〜っ」

2人して笑い出す。

そのとき私は、ふと思い出していた。さっきぶつかった人は誰だったんだろう…?

そう思ったとき。

ーー キーンコーンカーンコーン ーー

チャイムが鳴って、先生が入ってくる。

「はい、席着けー」

その声で教室のみんなが、ガタガタと動き始める。

「今日は、高校入ってすぐのお前達が今どの程度できるのか確かめるために、抜き打ちテストやるぞー。HR終わったらすぐ準備しろー」

途端、一斉に

「えぇーー!?」

そんな叫び声に包まれる。

四月。穏やかな高校生活の始まりだった。

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