体調の変化も特に現れず、無事に退院の日を迎えた。
明日から仕事にも行かれる。
「退院おめでとう。お願いだから油断するなよ」
「はい、わかってます」
「明日も無理はしなくていいから」
「…はい、わかってます」
今朝も聞いた同じ注意。
「先生、それ2回目ですよ」
クスクス笑いながら指摘する陸くんに、私も少し笑いそうになる。
「これくらい言わないと、…な?」
恵まれた環境で治療が受けられてよかった。
改めてそう思う。
「じゃあ行こうか」
着替えの詰まった重い荷物を、蒼が持ってくれる。
「あ、ありがと…」
「明日からは病室の外でな」
「はい。ありがとうございました」
「いいえ」
「陸くんもありがとう。」
「僕はなんにも。また、よろしくお願いします」
「こちらこそ」