「お疲れ様です〜」



血圧を測り終えると、看護師さんが私の腕をとって消毒の準備を始めた。



「血液検査、左手にしますね」



左腕が掴まれたその感覚が、手を小刻みに震わせた。





…港が魘されていた理由を聞かなかったのも、きっと大体予想がついていたからだろう。


私がもう一度それを思い出せば、きっと検査も続けられない。



港はこの間私が倒れたあの時の出来事が、毎晩私が魘される理由だということに気づいているに違いない。


…あの港が気づいていない訳がない。







だからと言ってここで検査を拒むのは、先生に迷惑をかけることになる。



数秒間頑張れば…


少しの間じっとしていれば…





自分に言い聞かせて気分を落ち着かせるものの、目の前の白衣と注射器の入れられたトレーは、余計私を興奮させた。