あのクリパ以来、瀬川には会っていない。


あの日、瀬川は泣いていた。


結局、俺には一度も笑顔を見せてくれなかった。


何で笑ってくれないの?


そう聞きたくても聞けなかった。


俺が“梨々”って気やすく呼んだのイヤだった?


俺と二人でいるのがイヤだった?


やっぱまだ、塚田のこと好きなの?


ちゃんと聞けば答えなんてすぐにわかる。


でも聞けなかった。


本当のことがわかってしまうから…


知ってしまうことが怖かった。


“うん”


そう言って作り笑いする彼女の姿が目に浮かんで…


本当のことを聞く勇気がなかった。