俺は早飛の少し前を歩いていた。


早飛の目を見て話せる自身がなかったから。


「つかお前ダサすぎじゃね?あんな緊張してる早飛初めてみたわ。マジウケた。」


ダセぇよ…


バカじゃん?


緊張なんてして。


声まで裏返ってさ。


「てかさ、お前は好きなヤツいねぇの?」


「……んなもん教えねぇよ〜ま、俺は早飛とは違うから(笑」


違うんだよ。


お前とは…


悔しいくらい普通に話せるんだ。


悔しいくらい平然としていられるんだ。


だからお前を裏切りきれねぇよ…


お前が彼女を好きすぎるから。


お前の方が本気だから。


だから俺は言えねぇよ…


絶対言わねぇよ。


このキモチ。


「さっさと帰るぞ。明日、俺ん家だからな。遅れんなよ。」


早飛に手を振りながら思ったんだ。


どうせなら消えちまえばいいのにな。


こんなキモチ…


邪魔なだけなのにな。


こんなキモチ…


口にすれば認めてしまうようでイヤだった。


俺には勝ち目なんてないんだと。


俺の想いは無意味なんだと。


それだけはイヤなんだ。


だってさ…


やっぱり俺、キミのこと…


言葉にすると溢れそうで。


切ない想いを振り切るように、俺はギュッと目を閉じた。