「戻んねぇの?」
「うん。顔ひどいし。このまま行ったらみんな盛り下げちゃうし。」
「んじゃ送る。」
「あ、ありがと……」
それだけ言うと彼女は黙り込んでしまった。
数十分の間、俺たちの間に会話はなかった。
気まずそうに俯く彼女を横目で見ながら、俺の心の中は切なさでいっぱいだった。
何で?
俺といるとき、何でキミはいつも泣いてんの?
「あ、じゃあ、ここだから…」
「ん…じゃあ……」
何で?
何で笑ってすらくれないの?
すぐそこまで出かけた言葉をグッと押し込めて、家に入ってく彼女をただジッと見送った。
“笑って”
そんな想いすら届かなくて。
他の誰かに向けられたあの笑顔を思い出す度、胸が苦しくて。
俺はまた唇を噛み締めていた。