玄関を飛び出した。
“可愛い”
高野がいとも簡単に言ってのけたその言葉は、俺がずっと言えなかった言葉だった。
何でだろう…?
“可愛い”なんて今までいくらだって言ってきた言葉なのに。
何でだろうな…
キミを目の前にすると言葉が上手く出てこないんだ。
もっと笑っていてほしいのに、キミと話すことすらできないんだ。
今日、高野に向けたみたいに、俺にも笑顔を向けてほしい。
そんな願いすら、叶わないんだよな…
「ハハッ……本当、ダセぇよな……」
近くにあったフェンスに寄り掛かりながら、情けない自分に虚しく笑った。