――夕日が差し込む静かな教室。


あの日、キミの綺麗な横顔は、俺の大事な友達を見つめてた。


幸せそうに微笑むその優しい表情に、俺の胸は高鳴った。


話したこともなかった。


特に意識したこともなかった。


名前すら覚えていなかったかもしれない。


それでもあの日。


一人切なげに校庭を眺めるキミに、この胸はトクンと音をたてて騒めいた。


綺麗すぎる横顔に、しばらくの間瞬きさえ忘れ見入った。


切なげな表情に、胸がギュッと狭くなった。


澄んだ瞳に映ったアイツの姿に、今度はチクンと痛みが走った。




女を目の前にして声が震えるなんて初めてだった。


自分を上手く制御できないなんて初めてだった。


こんなに臆病になるなんて初めてだった。


キミを好きだと思う度。


俺には向けられないキミの笑顔を見る度。


切ないキモチは今にも溢れそうだった。


そんなキモチを必死で抑えてきた。


何でアイツなんだよ?


何で俺じゃないんだよ?


いつもすぐそこにあったのは、そんな勝手な言葉ばかりで。


ありえないくらいにハマってく自分が怖かったし、ダサいって思った。


叶わない恋だってわかってたのに、何度も何度も傷ついて。


諦められなくて。


辿り着いた先は、ここだった。












――あの日よりも少し伸びた彼女の髪は、締め忘れた窓から吹き込む風にフワッと揺れた。


振り返った彼女は、瞬きもせずジッと俺を見つめる。


半年前、アイツを映していたあの瞳に、今は俺が映っている。


「……もう、とっくになってるよ?」


震える声で呟くと、目に涙を溜めたまま、優しく微笑んでくれた。