ピッ
ガタン
誰もいない食堂は教室と同じように静かで。
ただ、校庭が遠い分、時々耳につくのは運動部の掛け声ではなく、吹奏楽の楽器の音だ。
そんなことを考えながら、意識を逸らそうとするけれど、正直な心臓はなかなか落ち着いてはくれなくて。
仕方なく、さっき買った缶コーヒーに口をつけた。
じわーっと苦みが口の中に広がっていく。
普段は感じる僅かな甘みを感じない。
そんなことに何となく不安になる。
そんな不安を振り払うように残りを一気に飲み干す。
上手くいかなかったら、その時はその時だ。
呪文のように何度も繰り返し言い聞かせる。
「ふぅ…」
一度大きく息を吐き出し、腰をあげた。
「戻るか…」
確かめるように吐き出した声は、今度は震えてはいなかった。