キーンコーンカーンコーン


「起立、礼。」


「「お願いしまーす」」


いつも通りのやる気のない声が教室に響き、授業が始まってしまった。


1限目の英語の授業は結構好きだ。


先に言っておくけど、別に英語が好きなわけではない。


この授業が好きになったのは最近。


理由は単純。


「じゃあ、隣の人同士ではじめてください。」


隣の人との読み合いがあるからだ。


でも…


「瀬川サンは一人でやって下さいね。」


今日の授業は楽しくなんかない。


「はい…」


ポカンと空いた隣の席。


一時間目が始まったのに、今井クンはまだ学校にきていない。


何で来ないんだろう?


もしかして、さっきのアレ、嘘なのかな?


罰ゲームかなんかで…?




開いた席を見つめると、何故かそんな不安ばかりが募っていって。


バレンタインを思い出す。


あの日のことを思い出すと、傷つくのが怖くなって。


膨らんでいた期待はちょっとずつしぼんでいって。


傷つく前に、いっそ帰ってしまおうか?


そんなことさえ考え始めていた。