バクバクとうるさい心臓を宥めるように、フーッと息を吐き出した。


誰もいない隣の席をチラッと見ると、勢いよく席を立った。


教室を出て、もう一度深呼吸すると、振り返らずに歩きだした。


彼女の机に忍ばせた、小さな紙と赤いキャンディ。


何を書いたらいいのかわからなくて、何回も書きなおした。


【 放課後、教室で待ってる。】


たったそれしか書けなかったのは、震えた字を隠すため。


自分の名前すら書けなかったのは、隠しきれなかった俺の弱さ。


それでもこうして忍ばせたのは、どうしても伝えたいって思った決意の固さ。


キミを想う、俺のキモチ。


いつもと変わらない家路を辿りながら、柄にもなくそんなことを考えていた。