気づけば昼休みになっていて、俺はため息混じりに教室を出た。


どこに行くでもなく、ただ何となく歩いていた。


「今井クン!!」


階段を下りてフラフラしていると、後ろから瀬川の声がして、俺は慌てて振り返った。


「何?」


冷たくそう言うと、瀬川は少し引きつった顔をして俺に何かを差し出した。


「あ、あの。これ。」


それはきれいにラッピングされたピンクの袋で、俺はそれを見て思わず目を見開いた。


これってまさか…


俺の中でわずかな期待が膨らむ。


でも、その期待はやっぱりただの期待で。


「あ、あのね……い、今井クンには、あの…慰めてもらったり…助けてもらったりして……あの…だから……」


そう言われ、朝の高野の言葉を思い出した。


義理チョコ…


ありがとうってお礼…


「あーそういうことね…なんだ……」


お礼…


「えっ?」


俺は彼女の手からその袋を受け取った。


「わかった。ありがと。貰っとくわ。じゃ。」


それだけ言うと、背を向けて少し早足で立ち去った。