「”コータロー”。」

「”コータロー”?」

美羽がキョトンとする。

「先週の陸上部の。」

「あぁ!」

キーン…コーン……

美羽が思い出してポンと手をたたいたのと同時に、本鈴が鳴ってホームルームが始まり、ここからはひそひそ声となる。

新学期の為、席が五十音順であることに感謝。

川原美羽と清田繭子だから、席が前後なのだ。

「で?朝から何があったの?」

「それがね…。」

あたしは、靴箱の前でぶつかってからの話をした。

「楽しそうな子だね。」

「そーおー?面倒な感じじゃない?明後日が誕生日とかそんなこと聞いてないし。」

「もしかしたら繭子に気があるのかもよ?付き合っちゃえば?」

美羽はどこか楽しげで、外からかすかに聞こえる鳥の声みたいだった。

「まさかー。初対面で?てかあたし彼氏いるし。」