手を伸ばせば、触れてしまいそう……なんて事を思う程近い距離ではないのに、すぐ目の前に居るみたいなその存在感に、あたしの全てが躊躇(ためら)う。


「あたし、日本史苦手で…。ほ、補習なんだ。コータローこそ、いいの?部活中じゃないの?」

動揺を隠し、フツーに答えてる自分が嫌になる。

「今は休憩中だから。練習中に清田さんを見かけたから、ここまで来てみたんだ……。」

「…。」

それって……。

「グラウンド側の窓のとこに居たでしょ?オレ視力いいんだ。」

気づいてたんだ…。

どうしよう…嬉しい。


やっぱりコータローの側は心地よくて、校舎の中に居ても、ザワザワと風に揺れる木の葉の音が聞こえて来そうなくらい、澄んだ気持ちになる。

そして…あたしも揺れるーーー。


「コ…コータロー……。」

「ん?」

相変わらずのふんわりとした柔らかい笑顔で、優しくあたしを見るコータロー。