「…お兄ちゃん、ズルしてない?」

「するか!だいたいオマエが弱いんだろうが。」

「…。」

夏休みが始まって数日が過ぎた。

当たり前だけど毎日暑くて、宿題なんかまともに手をつけちゃいない。

補習と追試が終わってからやろうかな…なんて、のんびり構えてていいのだろうか。

「俺が溶ける前に帰ってこいよ?」

「はいはい…。」

あぁ…あたしって運がない。

お兄ちゃんはエアコンの効いた部屋で待ってるだけなんだから、溶ける訳ないでしょ。

溶けるのは、ジャンケンに負けてこれからアイスを買いに行くあたしだよ…。

今日は補習もなく、他に予定もないから、1日部屋着で過ごそうと思ってたのに…。

「行ってきまぁす。」

「おー、頼むぞ。」

お兄ちゃんに見送られ、一歩外に出るあたし。

「…。」

ダメだ、お母さんの日傘を借りて行こう…。