コータローの音が遠ざかり、雨音が大きくなっていく…。

コータローとの会話は、ホントいつも思いもよらない展開へと向かう。


”オレの好きな子って、清田さんだから。”

さっき、身体をかがめて、あたしの耳元で言った言葉ーーー。


言い逃げされたのもあるけど、何も言えなかった…。

ホントの話…?

いつものノリで、からかってるだけなんじゃ…。

だって、あたしには彼氏が…翔矢がいるんだから。

その翔矢とは、雪乃との一件で、ちょっとだけ微妙な関係だけど…。

「…。」

コータロー……。

コータローの事は嫌いじゃないけど…あたしは翔矢が……それに、ゆうちゃんーーー…。


あたしはーーー…何を考えてるの……?

翔矢という彼氏がいるんだから、それをコータローに改めて言えばいいだけじゃない。


シャラ……シャラ…


あたしの中のコータローの音が…聴こえてきた、気がした。

あたしは傘を閉じて、まとわりつく湿気に何とも言えない感情を覚えながら、改札へと続く階段をのぼった。