「茉莉華ちゃん、睦月君。大丈夫!?」

慌てて駆け寄ってくる先生達。

しかし茉莉華ちゃんは、
うっとりと睦月君に近寄って行く。

「茉莉華……睦月君の方がいい…」

そう言いながら

えぇっ!?

先生達も驚いてしまう。

「茉莉華ちゃん。王子様は、星哉君よ?
睦月君ではなくて…」

「嫌だ。茉莉華…睦月君の方がいい。
睦月君が茉莉華の王子様になって」

目をキラキラしながら言い寄って行く。

「…………。」

睦月君は、茉莉華ちゃんが迫って来るので
圧倒されていた。

あぁこれだと、どっちが王子様が分からない。
王子様役の子の印象が完全に
薄くなってしまった。

「どうしましよう……先生?」

オロオロしている私と違い
先生は、ビデオカメラを回していた。

「面白い。なかなか
いい映像が撮れたじゃねーか」

ニヤリと笑っていた。

ちょっ……先生!?

結局 最後は、
劇が無茶苦茶になってしまった。

歌は、何とか歌えたのだが
これでいいのだろうか?

ステージ発表が終わりお昼になった。
私と先生は、睦月君を出迎えることに。

「睦月君。よく頑張ったねぇ~怪我しなかった?」

心配そうに尋ねると首を横に振るう。
怪我は、していない様子だ。

良かった。

「しかし、なかなか面白い光景だったな。
さて、飯の時間か。手伝いに行かないと…」

ビデオカメラを確認しながらそう言ってきた。

そうだったわ。
もうお昼だし…手伝わないといけない。

すると向こうの方で怒鳴り声が聞こえた。

「茉莉華。何だあの演技は!?
せっかくの劇が無茶苦茶ではないか」