ホールを戻った。
すると中川先生が私達に気づいて
駆け寄ってきた。

「あ、居た。睦月君何処に行ってたの?
そろそろ集まらないといけないから
一緒に行こうね」

そう言い慌てて連れて行ってしまった。

私も観客席に戻る事にする。

まだ、さっきの茉莉華ちゃんのパパに
言われた言葉が引っ掛かりモヤモヤしていた。

(あんな言い方はないと思う)

席に戻ると先生が

「随分と遅かったな?」と言ってきた。

「す、すいません。
混んでいたので並んでいました」

先生には、本当の事が言えなかった。
ううん。言いたくなかった。

先生も睦月君は、
何も悪い事をしている訳ではない。

そんな事を言って傷つけたくなかったからだ。
モヤモヤ考えていたら
コツンと頭を軽く小突く先生。

「他人の目は、気にするな。」

こちらを見ずに言われる。

えっ……?

「先生…まさか聞いていたのですか!?」

「シッ。始まるぞ」

先生にそう言われたので慌てて手で口を塞ぐ。

もし、そうなら…どう思ったのだろうか?
腹が立たなかったのだろうか?

真っ暗になりステージが明るくなる。
すると園長先生が挨拶をしていた。

「それでは、可愛い園児達のお遊戯を
楽しんで下さい」

頭を下げると
最初の園児達がステージに集まる。

しばらくすると睦月君が居る
キリン組の発表が始まった。

『白雪姫』

小さな園児達の劇は、とても可愛らしい。

茉莉華ちゃんのお姫様姿は、
よく似合っているし周りの子に
比べて上手だった。