まさにこれは運命とでも言おうか
いや別に何度でも言うがモカと一緒が嫌というわけではないが、普通さ、こんなにクラスがあるんだから違うクラスになってもおかしくなくない?
クラスは6クラスに別れる編成になっている
のに!それなのに何故か私たちには運命の糸とやらがくくりつけられているのかもしれない
「1年3組……斎藤もか、……高来沙弥…」
「うわー、マジで同じクラスだね」
私の落胆の声にはは、と微笑を交えながらモカは私の背中をとんとんと叩いた
そんな別にそこまで落ち込んでるとかそういうことはないよ、ないんだけどせっかくの変わるチャンスなのにモカに甘えては意味がないと思うのよ
私は私の力で色々なことを慣らしていきたかっただけだ
そのためにこの高校に来たわけだし
でも、実際もしも友達が出来なかったらと思うとモカには隣にいてほしいと思う
ぼっちは嫌だ、でもこのままじゃ…変わることすら出来ないじゃないか
モカがいたら中学の頃の私のままなんじゃ…
でも、モカは親友と呼べる存在で大事な人だし
いろいろな考えが矛盾して頭がクラクラしてくる
「うぅ、心臓が痛い」
大袈裟に呻き声をあげる私にモカはまた笑った
「笑い事じゃないよー」
結構大事な問題だよ、そう言うとモカは私の頭を撫でた
やめてよ、子供じゃないんだからと言いたいところだが今は甘えておこう
それにモカの高い身長とスタイルの良さからしたら平均身長以下の私なんて子供というか妹というかといった感じだ
制服がモカより似合わないわけだ、もっと高校生っぽくなりたいものだ
「はぁ」ため息をつくと幸せが逃げるらしいが…今、私から何か逃げただろうか
「あ、見てコウくん!
僕たち同じクラスだよ!」
私がため息をつくと同時に今、到着したらしい男子の声が耳のなかに入り込んできた
随分と遅い登校ですねぇ、うちらだって結構遅い方なのに、それに朝から元気なことでなにより…
これだから男はうるさくて嫌い……
「ほら、1年3組だよ!」
しかも、同じクラスではないか
なんてこった
まぁクラスに何人かは必ずこういう連中はいるものだもんね
クラス表を指差していた手が私の視界に入り込んだ
スッと伸びたそれは男の子にしてはしなやかで白くて細くて、でも骨格はやっぱり男の子で指も長くて私なんかと比べたら当然大きそうな手だった
なんか、すごい綺麗な手
第一印象はそれだった
今までこんなにまじまじと男の子の手なんて見たことなかったから、初めて気づいた
男の子の手ってなんか少しかっこいいのかもしれないと思った
白くて、しなやか、でも女の子の手とは全然違う
「おー、マジだ、ラッキー」
「だねー」
もう1人の男の子もクラス表を確認しに来たようだ
声の主をたどるとそこにはがっつり制服を着崩した少年が立っていた
いかにも私の嫌いなタイプで少しだけ後ずさった
見るからに顔が怖くて目がつってる
制服のブレザーのボタンは開けっ放しだし、したに着ているはずのシャツは途中までしかボタンが閉められていない
ネクタイだってしていない
いかにも素行不良の生徒にしか見えないのに私と同じくらいの学力ってことだよね
この高校に受かったということは…
この高校・・・海美第二高等学校はそれなりの偏差値でそれなりに校舎も綺麗だし制服はかわいいからこの辺では人気な高校らしい
それに私の住んでいる地区からはかなりの距離があるから知り合いは来ないはずだった……のに何故かモカは来たようだ
私だって勉強を相当頑張ったから入れたのだ
見た目というもので人は判断してはいけないのだな、と改めて感じてしまう
「コウくんと一緒でよかった…」
そう言った優しい声が私の耳に入ってきた
なんだか男の子にしては随分とフワフワしていて、ゆるい
決して高い声なわけではない、普通の男の子と同じような低い声だ
なのにかわいくて少し聞き入ってしまう
その伸ばされた指をたどると綺麗な顔の男の子が立っていた
隣の男の子と違って制服の着方だって普通だ
というか、さっきの着方が普通ではないだけでこの着方は当たり前なのだ
それにしてもこの少年は輝いてみえる
それはきっと、この綺麗に整った顔の影響だろうか
身長がそこまで高いわけではないのに何故か目を惹かれる
初めて本物のイケメンとやらに出会った