「……結羽ちゃん?」 聞きなれた甘い低い声。 ここ数日、とても愛しく思っていた声。 背後からかかってきたその声の持ち主なんて、振り返らなくても分かった。 だって、わたしをそう呼ぶのはあなただけだから。 「……篠田先輩」 ゆっくり振り返って、黒ぶち眼鏡の彼を確認する。 そして、自分の胸が高鳴るのも。 ほら。 わたしは先輩が好きなんだよ。 それなのに……。 さっき木林くんに言われたことを思い出すと、無性に腹が立つ。