「いや、わたしが勝手に聞いてしまって……すみませんでした」



目を伏せた楓さんにも見えるように、深く頭を下げる。


だけどすぐ、やめてそんなこと、と止められてしまった。




そして彼女は何も言わず、スクールバッグから何かを探し始めた。


とり出したのは、透明なクリアファイルに丁寧に挟まれた1枚のクロッキー紙。



「あ……」



屋上にいるポニーテールの女の子の絵、その下絵。


もしかしてあの日……荷物を落とした時に。




「あの時、屋上の前に落ちていたの。誰のか分からなかったけれど、今日展示されている同じ構図の絵を見たら……名前が書いてあって。
 持ち主に返せてよかった」



そう笑って差し出してくれる。


それでわたしだとばれてしまったんだ……。



わたしはおじぎをして、気まずさを感じながらそれを膝に抱いた。